実家の相続税は、実家単体ではなく預貯金等を含む遺産全体の合計額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えた場合に課税されます。土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価し、小規模宅地等の特例を適用すれば土地評価額を最大80%減額できます。
本記事では課税判定・計算手順・シミュレーション・払えないときの対処法・売却時の税制優遇までを解説します。
※本記事は一般的な解説です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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相続税には「基礎控除(非課税枠)」が存在します。課税価格の合計額(プラスの財産から債務や葬儀費用を差し引き、生前贈与加算等を足し戻した正味の遺産額)がこの基礎控除額以下であれば、相続税は1円もかからず、申告手続きも原則として不要です。
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基礎控除額の計算式:3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | ひとりっ子で配偶者は既に他界 |
| 2人 | 4,200万円 | 子ども2人(配偶者は既に他界) |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者と子ども2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者と子ども3人 |
2015年の税制改正で基礎控除額が40%引き下げられたため、実家の土地評価額が高いために課税対象となる一般家庭が急増しています。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用すれば、遺産総額が基礎控除を超えていても結果として相続税額が「0円」になる世帯は数多くあります。
ここで陥りがちな落とし穴が、「納税額が0円なのだから、税務署への申告も必要ないだろう」という勘違いです。特例や税額軽減を適用した結果、納税額が0円になる場合でも、期限内(10か月以内)に税務署への申告書提出が必須です。特例を適用するには、相続税申告書への記載・必要書類の添付が必要となります。
未分割(遺産分割協議がまとまっていない状態)の場合は、申告期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告しておくことで、3年以内に分割が確定した後に特例を適用して還付を受けることができます。
| 遺産全体の合計額 | 課税判定 | 申告手続き |
|---|---|---|
| 基礎控除額以下 | 相続税は1円もかからない | 不要 |
| 基礎控除額を超えるが、特例適用で税額0円 | 特例を適用して納税額0円 | 必須(10か月以内に申告が必要) |
| 基礎控除額を超える(税額が発生) | 納税が必要な相続税が発生 | 必須(10か月以内に申告および納税) |
相続税の評価額は不動産会社の売却査定価格(時価)とは異なり、国税庁が定めた評価ルールに基づいて「土地」と「建物」をそれぞれ別々に算出して合算します。
土地の相続税評価の基準となる路線価は、公示価格等の8割程度を目途に設定されています。ただし、個別の物件時価の80%になるとは限らない点に注意が必要です。
| 評価方式 | 適用される地域 | 基本的な計算式 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 都市部・市街地の宅地 | 路線価(1㎡あたり) × 各種減価補正率 × 土地面積(㎡) |
| 倍率方式 | 路線価が設定されていない郊外や地方 | 固定資産税評価額 × 評価倍率(倍率表に定められた数値) |
路線価方式:道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの評価額(路線価)に土地面積を掛けます。不整形地や間口が狭い土地などは、使いにくさに応じた各種の「減価補正率」で評価額を引き下げます。
倍率方式:固定資産税の課税明細書に記載された「固定資産税評価額」に、国税庁が公表する「評価倍率」を掛けて算出します。
建物の評価方法はシンプルです。毎年送られてくる「固定資産税の課税明細書」に記載されている家屋の「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額(1.0倍)となります。築数十年の古い木造一戸建てであれば、建物の評価額は数十万円から数百万円程度まで下がっていることが一般的です。
実家が分譲マンション(区分所有建物)の場合、2024年1月1日以降の相続から「区分所有補正率(通称:マンション通達)」が適用されます。極端な「タワマン節税」を防ぐための改正であり、評価水準が0.6未満の場合などに補正が行われます。分譲マンション全体に適用され得るため、従来よりも相続税評価額が引き上げられるケースがあります。
一戸建て実家の「建物」や地方の「倍率地域の土地」であれば自力で大まかな評価額を出すことも不可能ではありません。しかし、「路線価地域にある土地」は、道路との接面状況、私道の有無、急な崖地の有無などによって、適用できる補正計算(奥行価格補正、崖地補正、不整形地補正、間口狭小補正など)が無数に存在し、自力での正確な評価は極めて困難です。
申告と納税の法律上のリミットは、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。銀行口座の凍結解除、戸籍謄本の収集、土地評価、遺産分割協議と、やるべきことは山積みです。期限を1日でも過ぎると無申告加算税・延滞税のペナルティが課されます。
| ステップ | 計算の内容 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| ① 課税価格を求める | 実家の評価額+預貯金等の遺産 − 債務・葬儀費用 = 課税価格。さらに基礎控除を引いて「課税遺産総額」を算出 | 債務・葬儀費用を正しく控除すること |
| ② 相続税の総額を仮計算 | 課税遺産総額を法定相続分で仮分割し、各自の仮の税額を合算して「相続税の総額」を算出 | 税率速算表(10%〜55%)を適用 |
| ③ 各自の最終税額を確定 | 相続税の総額を実際の取得割合で按分し、配偶者の税額軽減等を適用して最終納税額を確定 | 実際の取得割合で税負担が決まる |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 課税価格合計 | 5,000万円 |
| 基礎控除額 | 4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 800万円 |
| 相続税の総額 | 80万円(各400万円 × 税率10%) |
| 最終納税額 | 長男:64万円 / 長女:16万円(取得割合80%・20%で按分) |
| 項目 | 金額 | 計算式・備考 |
|---|---|---|
| 課税価格合計 | 1億2,000万円 | 実家6,000万円 + 預貯金6,000万円 |
| 基礎控除額 | 4,800万円 | 3,000万円 + 600万円 × 3人 |
| 課税遺産総額 | 7,200万円 | 1億2,000万円 − 4,800万円 |
| 法定相続分ごとの仮の税額 | 配偶者:520万円 / 長男:220万円 / 長女:220万円 | 配偶者:3,600万円×20%−200万円、子(各):1,800万円×15%−50万円 |
| 相続税の総額 | 960万円 | 520万+220万+220万 |
| 実際の分割に基づく按分 | 配偶者:480万円 / 長男:240万円 / 長女:240万円 | 取得割合(50%・25%・25%)で按分 |
| 最終納税額 | 配偶者:0円 / 長男:240万円 / 長女:240万円 | 配偶者は「配偶者の税額軽減」で0円に |
配偶者の納税額は、1億6,000万円までの法定相続分以下の取得であるため、配偶者の税額軽減特例が適用されて「0円」になります。しかし、これによって子どもたちの税金が減るわけではなく、長男と長女には合計480万円の相続税がしっかりと課されます。「配偶者が相続すれば家族全員の税金が安くなる」というのは大きな誤解です。
一次相続で配偶者に財産を過度に寄せると、二次相続(配偶者死亡時)に「法定相続人が1人減って基礎控除が減る」「配偶者の税額軽減が使えない」「配偶者固有の財産と合算されて累進税率が高くなる」等の理由で、通算の税負担が大きく増える「二次相続の罠」を招きます。一次・二次を通算したトータルでのシミュレーションが不可欠です。
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相続税額が10万円を超え、一度に現金を用意できない場合、税務署に申請して分割で支払う「延納」が認められます。延納税額が100万円以下かつ延納期間3年以下の場合は担保不要ですが、延納期間中は利子税が発生します。
延納でも払えない場合に限り、相続した実家の土地そのものを国に引き渡す「物納」が認められます。ただし、境界未確定の土地や抵当権が残る土地は「管理処分不適格財産」として却下されるなど、要件は極めて厳格です。
10か月の期限内に実家を売却し、売却代金を納税に充てる方法です。不動産の売り出しから買い手が見つかり決済が完了するまでには時間を要するため、早めに不動産会社や税理士と連携して計画的に進めることが重要です。
| 対処法 | メリット | 注意点・リスク |
|---|---|---|
| ① 延納 | 手元の現預金が一気になくなるのを防げる | 利子税が加算され最終的な金銭負担が増加する |
| ② 物納 | 現金を支払う必要が完全になくなる | 管理処分不適格財産の判定が極めて厳格で実務上の適用は困難 |
| ③ 売却 | 最も現実的であり不要な不動産を同時に手放せる | 売り急ぐと安値で手放すハメになるおそれがある |
実家の相続における最大の節税武器が「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」です。被相続人の自宅の土地のうち、最大330㎡まで評価額を80%減額できます。たとえば土地評価額5,000万円の場合、特例適用で課税対象は1,000万円に圧縮されます。
| 取得者 | 適用要件 | 難易度 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 取得者側の要件なし(居住・保有継続要件なし) | 極小 |
| 同居の親族 | 相続開始直前から申告期限まで引き続き居住・保有し続けること | 中(偽装同居は否認) |
| 別居の親族(家なき子) | 配偶者・同居親族がいない場合に限り、3年以内の居住状況等の厳格な要件をすべて満たすこと | 極高 |
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 被相続人の状況 | 配偶者がおらず、同居の法定相続人が1人もいないこと |
| ② 3年以内の住居 | 自己・配偶者・三親等内の親族等が所有する家屋に居住していないこと |
| ③ 過去の所有履歴 | 居住している家屋を過去に所有していたことがないこと |
| ④ 保有の継続 | 申告期限(10か月)まで土地を保有し続けること |
一定の要件を満たせば適用可能です。具体的には、①被相続人に要介護認定等があること、②入所施設が法令に定める適格施設であること、③入居後に実家を第三者への賃貸等に供していないこと、の3要件を個別に判定する必要があります。第三者への賃貸を行うと適用対象外となる可能性が高いため、必ず事前に税理士へご相談ください。
相続した実家を売却する場合、利益(譲渡所得)に対して約20.315%の譲渡所得税が課されます。この税金を圧縮する2大特例が以下です。
相続した空き家を売却した際、売却益から最高3,000万円(相続人3人以上は1人あたり最高2,000万円)を控除できる制度です。
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実家を相続して相続税を納めてから「相続開始から3年10か月以内」に売却を完了した場合に、支払った相続税のうち、売却した不動産に対応する一定の金額を取得費(経費)に上乗せして差し引くことができる制度です。注意すべきは、支払った相続税の「全額」を経費にできるわけではなく、一定の公式で按分計算された金額のみが加算対象となる点です。
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2つの特例は重複適用不可(選択適用)です。最初の分岐点は「そもそも物件や相続人がそれぞれの適用要件を満たしているか」という前提条件です。空き家特例は「昭和56年5月31日以前の一戸建て」「被相続人が一人暮らし」「売却価格1億円以下」など極めて厳しい要件があり、1つでも満たせない場合は自動的に取得費加算の一択となります。
| 有利な特例 | 適しているケース | 理由 |
|---|---|---|
| 空き家特例 | 相続税の納付額が比較的少額のケース | 支払った相続税が少なければ取得費加算額も小さく、最大3,000万円控除が圧倒的に有利 |
| 取得費加算 | 相続税額が数千万円以上の大規模相続 | 取得費加算額が3,000万円を大きく超える場合がある |
安易に自己判断せず、必ず両方のパターンで税額を試算してから選択してください。
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A. 相続税は被相続人の遺産全体を基に計算します。自身が相続した財産が実家だけでも、遺産全体の課税価格が基礎控除額を超えていれば申告が必要です。特例適用で納税額が0円になる場合でも、申告書の提出は必須です。
A. 原則として、老人ホーム入所後に実家を第三者へ賃貸すると、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等・80%減額)の対象外となる可能性があります。施設の種類、要介護認定、入所後の自宅の利用状況など、複数の要件を個別に判定する必要があります。
A. 空き家特例の場合、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。ただし、制度の適用期限は2027年12月31日までのため、二重制限に注意が必要です。
たとえば2026年8月に親が亡くなった場合、「3年を経過する日の属する年の12月31日(2029年12月31日)」という個別要件を満たしていても、制度の期限が2027年12月31日までのため、実質的には2027年12月31日までに売却を完了させなければ特例を適用できません(将来の法改正・制度延長の有無には注視が必要です)。取得費加算の特例は、相続開始から3年10か月以内に売却を完了すれば適用可能です。
A. 代表者1人の単独名義とし代償金を支払う「代償分割」、または売却して現金を分ける「換価分割」がトラブルが少なくおすすめです。安易な共有名義は避けてください。
A. 建物は固定資産税の課税明細書の「価格」欄がそのまま相続税評価額です。土地は国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で大まかな算出が可能ですが、正確な評価は税理士への依頼をお勧めします。
A. 当事務所では、初回の相談を無料にて承っております。正式な申告書作成・提出の税理士報酬は、遺産総額や評価の難易度等に応じて個別にご案内いたします。
実家の相続税は、評価方法や特例の使い方で納税額が大きく変わります。基礎控除内でも申告が必要な場合があるため、判断に迷ったら早めに相続専門の税理士へご相談ください。
※本記事は一般的な解説です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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