大切な家族が亡くなった後、遺族は複数の金融機関に対し、それぞれ異なる書類を用意して個別に手続きを行わなければなりません。
この煩雑さを解消するために、SMBC日興証券や野村ホールディングス、三菱UFJ信託銀行、NTTデータなど大手10社が基本合意を締結し、相続手続きを一元化するプラットフォーム「みらいたすく」の構築を進めています。
ここでは、2028年の本格始動に向けたこのプロジェクトの概要と今から準備しておくべきことについて解説します。
※本記事に掲載している内容は、2026年4月執筆時点の情報を基に構成されています。本制度は現在検討段階のプロジェクトも含まれているため、社会情勢や法改正等により、サービス開始時までに内容が変更される可能性がある点をご留意ください。
目次
現在、日本では年間数百万件の相続が発生しており、手続きの煩雑さが社会的な課題となっています。相続人が直面する主な負担は以下の3点です。
こうした課題を業界横断で解決するために、「みらいたすく」の構築がスタートしました。
2028年に予定されている全国展開以降、相続人の手続きは大きく変わります。以下が主なメリットです。
最大の特長は、「一度の入力で複数の金融機関への手続きが完結する」点です。相続人がオンライン上で情報を登録し、スマホで撮影した戸籍謄本などをアップロードすれば、提携するすべての金融機関へ同時に手続き依頼が届きます。自宅から、スマホ一つで複数の銀行・証券会社の名義変更や解約手続きを進められるようになります。
故人が家族に伝えていなかった口座や、ネット銀行の口座、長年放置されていた口座なども、「みらいたすく」を通じて一括で照会できる仕組みが検討されています。これにより、「遺産を見落として後から修正申告が必要になった」というトラブルや、未請求のまま放置される資産(休眠口座=長期間取引がなく、預金者との連絡がつかない口座)を減らすことが期待されます。
これまで必須だった「書類への実印の押印」と「印鑑証明書の添付」が不要になります。マイナンバーカードの公的個人認証(電子署名)を利用することで、安全かつ迅速に本人確認を行い、電子相続依頼書を自動で作成できるようになります。
このプロジェクトは、以下のスケジュールで進行しています。
当初は参加10社が中心となりますが、将来的には地方銀行や信用金庫、その他の証券会社など、より多くの金融機関への拡大が視野に入れられています。
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利便性が高まる一方で、相続人が誤解しやすいポイントもいくつか存在します。制度に対する過度な期待を防ぐため、以下の点を正確に理解しておきましょう。
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2028年のサービス開始を待つだけでなく、今からできる準備が相続の円滑さを大きく左右します。その中でも特に重要なポイントをお伝えします。
「みらいたすく」の利便性を十分に活用するための前提条件は、マイナンバーカードの取得と口座との紐づけです。2024年4月から始まった「預貯金口座付番制度」(=マイナンバーと銀行口座を紐づけることで、相続時に口座の有無を一括照会できる制度)により、紐づけを済ませておけば相続人が全金融機関の口座を一括で確認できる道が開かれています。
現時点では紐づけがされていないと照会ができないため、生前のうちに「マイナンバーと口座の連携」を済ませておくことが、将来の家族の負担軽減に直結します。特に高齢の親がいる場合は、本人が元気なうちにマイナンバーカードの申請と口座の紐づけ手続きを一緒に行っておくことを強くお勧めします。
「みらいたすく」があるからといって、無数に口座を持ったままで問題ないわけではありません。実務上、相続人が困ることは「使っていない口座が10個以上あり、それぞれに数千円しか入っていない」ようなケースです。手続きの手間は残高の金額に関わらず発生するため、少額の口座が多いほど、相続人の労力が増加します。
生前のうちに不要な口座は解約し、資産をスリム化しておくこと。そして、銀行名・支店名・口座番号を記した「金融資産の一覧表」や「エンディングノート」を作成しておくことが効果的です。照会機能があるとはいえ、事前に目処がついていれば手続きのスピードは格段に上がります。
「みらいたすく」によって、残高証明書の取得や書類提出といった事務作業の負担は大幅に軽減されるでしょう。しかし、「誰がどの資産を引き継ぐのが税務・法務的に最適か」「二次相続(=残された配偶者が亡くなった際の相続)を見据えてどう分割すべきか」「小規模宅地等の特例をどの不動産に適用すべきか」といった判断は、システムにはできません。
「手続きが楽になるから専門家はいらない」と考えるのは間違いです。むしろ、事務作業から解放される分、その時間を「家族が争わないための話し合い」や「最適な税務対策の検討」といった本質的な議論に充てることが、これからの時代の相続の進め方です。
| 項目 | 従来(2026年現在) | みらいたすく(2028年〜) |
|---|---|---|
| 書類の準備 | 各金融機関ごとに戸籍謄本等を用意 | 一度のアップロードで共有 |
| 本人確認 | 窓口訪問、実印、印鑑証明書 | スマホ+マイナンバーカード |
| 隠れ口座の調査 | 通帳や郵便物から自力で調査 | 提携先の一括照会が可能 |
| 手続きの場所 | 銀行・証券会社の窓口や郵送 | オンライン(スマホ・PC) |
| 対象資産 | 預金、株式、不動産、保険など | 預貯金、有価証券が中心 |
A. 現時点では2028年秋の全国展開以降にサービスが開始される予定です。過去の相続案件への対応については、今後の詳細設計を待つ必要があります。
A. システムの利用手数料については検討中です。ただし、既存の遺産整理業務と比較して、デジタル化による低コストなサービス提供が期待されています。
A. 従来の対面窓口や郵送での手続きも並行して維持される見込みです。また、親に代わって子が操作するような利用シーンも想定されています。
「みらいたすく」は、遺族の手続き負担を大幅に軽減するための、金融業界を横断した相続DXプロジェクトです。2028年の本格サービス開始に向けて、このインフラは着実に整備されています。
しかし、システムはあくまで「道具」であり、その恩恵を最大限に受けるためには、「マイナンバーカードの準備」と「生前の口座整理」という、私たち自身の準備が欠かせません。手続きはシステムで効率化し、相続の質は専門家の知恵で高める。そうした意識を家族で共有しておくことが、これからの時代の相続対策の第一歩です。
当事務所では、生前の資産整理や相続税対策に関するご相談も承っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
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