東京23区に自宅や実家を持っている方にとって、避けて通れないのが「不動産の相続」です。中には、「土地の路線価を調べてみたけれど、これくらいの評価なら安心かな」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、安易に「路線価が低いから大丈夫」だと考えていると、思わぬトラブルが生じるおそれがあります。
特に東京23区においては、税金計算の基準となる「路線価」と、実際に市場で売買される価格である「実勢価格」との間に驚くほどの乖離(かいり)が生じているケースが珍しくありません。
この「価格のズレ」は、単に相続税の金額だけでなく、遺産の分け方や法律で守られた最低限の取り分(遺留分)、そして売却の判断といった、相続のあらゆる場面で深刻な問題を引き起こす可能性が考えられます。
ここでは「なぜ東京でこれほどの乖離が起きるのか、そしてそれがどのような相続トラブルを招くのか」について詳しく解説します。
目次
土地は「一物五価」と言われており、1つの土地に対して目的ごとに異なる価格が使われています。その中でも特に重要になる価格が「路線価」と「実勢価格」です。
・路線価
相続税や贈与税を計算するために国税庁が公表している価格です。概ね「公示地価」の約8割を目安に設定されています。
・実勢価格
実際に市場で取引される「時価」です。需要と供給のバランスで価格が決まります。
本来、路線価は実勢価格に近い「公示地価」の8割程度になるよう設定されています。 しかし、これはあくまで「標準的な土地」を想定した全国的な目安に過ぎません。
東京23区のように土地の個性が強く、価格上昇が激しいエリアでは、この設定通りの比率には収まらないのが実情です。
東京23区では、大規模な再開発が各地で行われており、利便性が飛躍的に向上したエリアが多数存在します。 また、円安の影響や日本の不動産の安定性を背景に、海外投資家からの人気を集めており、需要が供給を大幅に上回っている状態です。
こうした「市場の熱気」や「プレミアム感」は、実勢価格には即座に反映されますが、税金の計算に使われる路線価にはなかなか反映されにくいという性質があります。なぜなら、 税金は公平性が重要であるため、あまりに急激な市場価格の変動にすぐ追随させてしまうと、納税者の負担が予測困難になってしまうからです。
その結果、「市場では1億円で取引されている土地なのに、路線価で計算すると5,000万円程度の評価にしかならない」といった状態が、東京23区では生じる可能性があります。
この「路線価と実勢価格の大きなズレ」は、相続人同士の話し合いにおいて、深刻な不公平感を生む原因となるおそれがあります。
不動産の相続でよく使われる方法に「代償分割」があります。これは、長男などの特定の相続人が自宅をそのまま引き継ぐ代わりに、他の相続人に対して、自分の持ち出しで現金を支払う(代償金を払う)方法です。
ここで問題になるのが「代償金をいくらにするか」ということです。
相続人は兄弟2人、東京23区内の実家を長男が相続し、次男に代償金を支払うケースを見てみましょう。
東京23区内にある実家の評価額
路線価:6,000万円
実勢価格(時価):1億円
・長男は、代償金の基準を路線価で考えており、6,000万円の法定相続分1/2である3,000万円が代償金だと思っていた。
・次男は、実勢価格である1億円の1/2である5,000万円を代償金として受け取るものだと思っていた。
このように、路線価と実勢価格の大きなズレがある場合、算定基準の違いで代償金が大きく異なる場合があります。裁判や調停に発展した場合、原則として、時価である実勢価格で判断されることになりますが、価格のズレによりトラブルに発展することは珍しくありません。
※裁判や調停における代償金の具体的な評価方法は個別事情によって異なります。
相続人が最低限もらえると法律で保障された取り分である「遺留分」についても、計算の基礎となる不動産の価値は、原則的に「相続開始時の時価(実勢価格)」で判定されます。
東京23区では、路線価と実勢価格の乖離が大きいため、想定していた遺留分の金額が、実際には数千万円単位で膨れ上がる可能性があります。
東京23区の自宅を遺言により相続人の1人に相続させた場合、その不動産以外の財産が少ないと、他の相続人からの遺留分請求に応じるために現金を用意する必要があります。
遺留分の計算の基礎は実勢価格で判定されるため、遺留分の金額が多額になる可能性があります。もし、キャッシュが用意できない場合は、せっかく引き継いだ自宅を売却せざるを得なくなるという事態も考えられます。
東京のような高額な不動産マーケットでは、この「実勢価格による計算」が、相続トラブルを生じさせることも珍しくありません。
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不動産相続後、すぐにその不動産を売却しようと考えている場合、事前に実勢価格はどのくらいなのかを把握しておくことが重要です。
相続税は、原則として相続が発生した日の相続税評価額を計算し、10か月以内に現金で納税しなければなりません。そのため、納税資金を確保するために、相続した不動産を売却するケースもあります。
しかし、実際に不動産を売却してみると、想定より高値で売れることもあれば、境界の問題や建物の瑕疵などで売却金額が想定よりも低くなることもあります。特に東京23区では、「この価格で売れるだろう」という希望的観測と、実際の取引価格に差が出やすいため、「いくらで売れて、税金を払った後にいくら手元に残るのか」という計画を最初から立てておくことが大切です。
相続した不動産を売却して利益が出た場合、相続税とは別に「譲渡所得税」が課税されます。譲渡所得税では、次の特例を知っているかどうかで、最終的に手元に残る現金が大きく変わる可能性があります。
・空き家特例(被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除): 一定の耐震基準を満たすなどの要件はありますが、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
・相続税の取得費加算の特例: 支払った相続税の一部を、不動産を売却した時の経費として上乗せできる制度です。相続から3年10か月以内に売却することが条件となります。
不動産の価格は1つではなく、相続の場面では、目的に応じて複数の「価格」が使い分けられています。相続税の計算では路線価などの相続税評価額が用いられますが、実際に売却する場合や、相続人同士で公平に分けるための代償金・遺留分の算定では、一般的な時価(実勢価格)が基準となります。
特に東京23区の不動産は、路線価と実勢価格の乖離が大きく「相続税は想定より少なかったが、代償金が高額になり支払えない」「遺留分の請求額が予想以上に大きく、トラブルに発展した」といったケースも珍しくありません。
不動産相続では「どの価格を、どの場面で使うのか」を理解したうえで判断することが非常に重要です。相続税評価額だけを見るのではなく、将来の売却や相続人間の調整まで見据えた価格把握が、円満な相続への第一歩になります。
なお、東京の相続については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.いいえ、相続税の計算では、実際に売れる価格(時価)ではなく、国税庁が定める相続税評価額(路線価など)で評価します。そのため、特に東京では、実勢価格よりも低い金額で評価されるケースが多くあります。
A.代償金や遺留分を算定する際は、相続税評価額ではなく、一般的な時価(実勢価格)が基準になります。路線価との乖離が大きい場合、想定より高額な代償金や遺留分侵害額が生じることがあり、注意が必要です。
A.東京23区では不動産需要が高く、再開発や立地条件の影響を受けやすいため、市場価格が上昇しやすい傾向があります。一方、路線価は毎年一定の基準で算定されるため、市場価格との間に大きな乖離が生じやすくなります。
東京23区の不動産相続は、「路線価を知っているだけ」では、安心な相続の実現を目指すことはできません。実勢価格との大きな乖離がある場合は、税金と不動産に精通した専門家のアドバイスが必要不可欠です。
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