「相続」と聞くと、多額の遺産を持つ富裕層だけに関わる話で、自分たちのような一般的な家庭には関係のないことだと考えてしまうかもしれません。しかし、現代の東京における相続事情は大きく変化しており、東京国税局管内における相続税の申告割合は全国平均(約10%)を大きく上回る約20%に達しています。
これは5軒に1軒が相続税の対象になっている計算になり、都心の地価の高さゆえに、一見普通の家庭でも「相続税」が発生し、その納税資金や遺産分割で揉める「争族(そうぞく)」に発展するケースも少なくありません。
ここでは、大切なご家族の絆と資産を守るため、不動産に強い相続税専門の税理士が「東京の相続における特有の事情と円満な相続を実現するための具体的な対策」を詳しく解説します。
目次
東京都心部で相続が「争族」へと発展しやすい背景には、次の要因が考えられます。
東京都内が全国平均よりも圧倒的に相続税の課税割合が高い最大の原因は、土地の価格が高いことです。相続税がかかるかどうかのボーダーラインである基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
仮に相続人が3人であれば、基礎控除額は4,800万円となります。東京都心に不動産を持っている場合、ほとんどのケースで不動産の土地評価額だけでこの基礎控除額を容易に超えてしまいます。そのため「親が家を持っているだけ」で相続税が発生することも少なくなくありません。
相続税が発生すると、納税資金不足が争族問題の火種になってしまうリスクがあります。
相続トラブルが起きやすいケースには「相続財産の大半が不動産である場合」が挙げられます。東京では地価が高いため、相続財産に占める不動産の割合が非常に大きくなる傾向があり、次のような問題が発生するリスクが高くなります。
不動産(マイホーム)しか保有していない家庭は、資産のほとんどが不動産に偏り、相続税の納税資金となる現預金が不足してしまいます。
相続税の納税は現金納付が原則であるため、納税資金が不足すると、相続人がマイホームを売却して資金を捻出しなければならない事態に追い込まれるリスクが考えられます。
財産が不動産に偏った相続では、財産の分け方を巡って相続人同士の意見が対立しやすくなります。特に、自宅に同居していた相続人がいる場合「住み続けたい」という希望と他の相続人の「公平に分けたい」という思いがぶつかり、トラブルになってしまうことも少なくありません。
また、自宅に同居している相続人がいない場合であっても、不動産は預金と違って物理的に分けることができないため、遺産分割がなかなか成立しないこともあります。
相続トラブルの多くは、親が元気なうちに家族で話し合い、必要な準備を必要な時にしていれば防げるケースがほとんどです。しかし「自分には関係ない」「まだ早い」という認識から、多くの方が生前対策をしないまま相続を迎えてしまいます。
相続で「もめる家族」と「もめない家族」の差は、生前に相続対策を行ったかどうかが大きく影響します。対策を行っていないために税額を大きく軽減できる特例が利用できなかったり、遺言書を作成していなかったため、遺産分割がなかなかまとまらず相続税の申告期限に間に合わなくなってしまったり、事前の対策をしていないために生じるリスクは少なくありません。
将来的に相続が「争族」に発展するリスクが高い家庭には、いくつかの共通する特徴があります。以下の項目に1つでもチェックが入った方は、早期に相続税専門の税理士へご相談ください。
| チェック項目 | リスクの要因 |
| □ 都心部に評価額5,000万円以上の不動産がある | 東京の不動産は高額なため、相続税の課税リスクと分割の難しさが争族に直結します。 |
| □ 相続人が複数いるが、遺言書がない | 遺言書がない場合、遺産分割は相続人全員の合意が必須となり、意見の食い違いから対立が生じやすくなります。 |
| □ 特定の相続人(長男など)が同居しており、その人が家を継ぐと思っている | 同居していた相続人が「家を継ぐ権利がある」と主張し、他の相続人が「公平に分割すべき」と考えることで、感情的な対立が生じやすくなります。 |
| □ 家族間で相続やお金の話をタブー視している | 相続について家族で話し合うことを避けていると、親の意向や財産状況が不明確なまま相続が発生し、不信感や疑念(資産隠し、使い込みなど)から争いに発展しやすい傾向にあります。 |
| □ 相続税の試算をしたことがない | 東京では不動産評価額が高いため、試算をしていないと相続税申告が必要なことに気づかず、納税資金の確保が遅れるリスクがあります。 |
| □ 相続人の中に、過去に親から多額の援助を受けた人がいる | 生前贈与(特別受益)や多額の資金援助を受けた相続人がいる場合、他の相続人に不公平感が生じ、遺産分割の際に持ち戻し計算などで揉める可能性があります。 |
| □ 不動産以外の金融資産(預貯金・株)が少ない | 不動産という「流動性の低い資産」が占める割合が多いため、代償分割の資金確保や相続税の納税が難しくなります。 |
| □ 親の介護や世話の負担が、特定の相続人に偏っていた | 介護の貢献(寄与分)を他の相続人が認めない場合、「自分だけが苦労した」という感情的な不満が爆発し、激しい争いに発展しやすい傾向があります。 |
| □ 相続人の中に、疎遠な兄弟姉妹や、面識のない前妻の子がいる | 関係が希薄または複雑な相続人がいる場合、冷静な協議が難しく、財産額に関係なく感情的な対立が表面化しやすくなります。 |
東京での相続を円満に進めるためには、不動産の価値を正しく評価し、相続税の専門知識を駆使した生前対策が必要です。どのような対策が必要かについて見ていきましょう。
遺言書は、相続トラブルを未然に防ぐために最も有効な方法です。遺言書を作成していれば、原則としてその内容に従って相続財産を分割するため、遺産分割協議自体が不要となり、争族になるリスクを大幅に軽減することができます。
遺言書を作成する際は「公正証書遺言」がお勧めです。公証人が関与する公正証書遺言は、法的な不備で無効になるリスクが極めて低く、原本が公証役場に保管されるため紛失や偽造の心配がありません。また、遺言書では財産の分け方を指定するだけではなく、付言事項に「なぜそのように分けたのか」という理由や、家族への感謝の気持ちを記すことで、財産取得額に偏りがあっても、他の相続人の「気持ちの納得」が得られやすくなります。
東京の相続では「相続税の試算と納税資金の確保」は必要不可欠です。まずは、不動産や預貯金、有価証券、借金など、すべての相続財産を正確に把握し、財産目録を作成して「見える化」を行いましょう。
全ての財産の把握が完了したら、相続税専門の税理士に依頼し、税法に基づいた不動産評価を行い正確な相続税額シミュレーションを行いましょう。これにより、納税資金が不足するかどうかを把握できます。
相続税の納税資金の準備には、生命保険の活用が効果的です。死亡保険金は一定額が非課税になる特例があり、相続税額を抑えながら納税資金を効率的に準備することができます。
生命保険については「相続税対策には生命保険の活用が第一|でも、契約内容には注意が必要」をご覧ください。
東京都内の不動産は相続税評価額が高額になるケースが多いため、宅地の評価額を大きく減額できる「小規模宅地等の特例」を適用可能な状況にすることが極めて重要です。この特例は、居住用や事業用など、一定の要件を満たす宅地について、限度面積までの土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
ただし、この特例を適用するためには、「誰がその不動産を相続するか」「その人がどのような状況にあるか」など、複雑な適用要件を満たす必要があるため、相続専門の税理士に相談しましょう。
相続を「争族」にしないためには、税務や法律の知識だけでなく、家族の絆を守るための対策も必要です。生前の家族間でコミュニケーションを行う機会を設け、親が元気なうちに、不動産を含む財産内容や相続への意向を家族でオープンに話し合いましょう。
話し合いの結果をもとに専門家に相談し、生前贈与や家族信託を検討してみることも重要な争族対策になるでしょう。
東京都内では、地価の高騰により、相続税の課税リスクが非常に高まっており、不動産の分割の難しさから、多くのご家庭が「争族」のリスクに直面しています。相続トラブルは、一度起きてしまうと解決に時間と費用がかかり、何よりも家族関係を大きく損ないかねません。
当事務所は、不動産に強い相続税専門の税理士事務所として、東京の複雑な不動産相続に特化したサポートをご提供しております。ご家族の絆と大切な資産を守り、円満な相続を実現するために、ぜひお気軽に下記の問い合わせフォームよりご連絡ください。
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