貸付用不動産を活用した相続税対策は、長らく「王道」の手法として活用されてきましたが、令和8年度(2026年度)税制改正大綱において、このスキームに大きな制限をかける方針が打ち出されました。
ここでは「5年以内ルール」と言われる新制度の概要と今後の貸付用不動産の取得における注意点を解説します。
目次
通常、土地の相続税評価は路線価方式(または倍率方式)、建物は固定資産税評価に基づいて行われます。路線価は地価公示価格(時価)の8割程度、固定資産税評価額は時価の5割~7割程度に設定されているため、現金を土地・建物に替えるだけで評価額を20%以上引き下げることが可能でした。
さらに、その不動産が「賃付用」である場合、自用地としての評価から、土地は借地権割合×借家権割合分(20%程度)が差し引かれ、建物は借家権割合(30%)が差し引かれます。
一定の要件を満たす貸付事業用宅地については、200㎡までの部分について評価額を50%減額できる「小規模宅地等の特例」を利用することができるため、都心部の優良物件などでは、購入価格(時価)に対して相続税評価額を3割〜5割程度まで圧縮できるケースも多く見られました。
新たに導入される「5年以内ルール」では、時価と相続税評価額の乖離を利用した極端な租税回避を抑制することを目的としています。
【5年以内ルールの概要】
制度の対象:被相続人(亡くなった方)が、相続開始前5年以内に対価を伴う取引により取得、または新築した「一定の貸付用不動産」が対象になります。
新しい評価方法:従来の路線価や固定資産税評価額ではなく、「課税時期における通常の取引価額(実勢価格)」を基準とした評価に切り替わります。具体的には、取得価額に地価変動等を考慮した金額の100分の80(80%)で評価される見込みです。
つまり、「亡くなる5年以内に購入した貸付用不動産が対象になり、該当する貸付用不動産は購入した金額の80%で評価する」という改正になります。
これまでは時価の3割〜5割程度で計算することができた相続税評価額ですが、今後は時価の8割まで引き上げられることになり、貸付用不動産を利用した節税効果は大幅に制限されると見込まれます。
令和8年度(2026年度)税制改正大綱で、不動産小口化商品(任意組合型や信託受益権型)についても、厳しい評価の見直しが行われることになりました。
通常のアパートやマンションなどの貸付用不動産は、取得から「5年以内」であれば時価(取得価額の80%)で評価されますが、5年を超えて保有すれば従来の路線価評価等に戻る仕組みです。
一方で、不動産小口化商品は取得時期にかかわらず、恒常的に「通常の取引価額(時価)」で評価されることになります。つまり、5年経てば節税効果が戻るという「逃げ道」がありません。
【不動産小口化商品の改正】
制度の対象:不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産が対象になります。
新しい評価方法:取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価します。
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令和6年から適用されている「マンション通達(分譲マンションの評価方法)」が主に区分所有マンションを対象とし、市場価格との乖離を是正するものであるのに対し、5年以内ルールは、取得時期が相続開始前5年以内であれば一棟物件を含む全ての貸付用不動産を規制する点に大きな違いがあります。
実務上、5年以内に取得した貸付用マンションについては新ルール(取得価額の80%評価)が優先されますが、5年を超えて保有する場合や自己居住用のマンションについては、今後もマンション通達による評価が維持される関係性になると思われます。
この新ルールは、令和9年(2027年)1月1日以降の相続や贈与から適用されます。令和8年中に贈与を完了させれば、現行の路線価評価が適用可能ですが、改正直前の駆け込み贈与は、実態によっては「租税回避」とみなされ、総則6項により時価評価を求められるリスクが残るため、慎重な判断が必要です。
A. 適用されます。新ルールは令和9年(2027年)1月1日以降の相続または贈与から適用される方針です。たとえ改正前の令和8年中に購入した物件であっても、相続発生日が令和9年以降であり、かつ取得から5年以内であれば、従来の路線価評価ではなく「取得価額の80%」をベースとした新ルールで評価されることになります。
A. 一定の要件を満たせば、経過措置により従来の評価が認められる可能性があります。 「改正を通達に定める日」の5年前から引き続き所有している土地に建物を新築する場合、その建物が通達の定める日までに着工(建築中を含む)していれば、この新ルールの対象外(適用除外)となる経過措置が検討されています。
※改正を通達に定める日は現在(2026.1時点)のところ不明
A.不動産小口化商品を取得している場合の対応策として、相続時精算課税制度を利用する方法が考えられます。令和8年中に相続時精算課税制度を利用して贈与を行えば、贈与時の評価額(現行の路線価等ベースの評価額)が将来の相続時に持ち戻される価額として固定され、改正による評価額の影響の対策になると思われます。ただし、こちらも総則6項により時価評価を求められるリスクが残るため、慎重な判断が必要です。
未確定な部分が多いため、相続時精算課税を利用した対策を検討する場合は、相続税に詳しい税理士に相談し、シミュレーションすることをおすすめします。
今回の改正は、貸付用不動産を利用した直前の節税対策に大きな影響を与える改正です。不動産小口化商品など、短期間で行える節税対策は規制の対象になってきていますので、これからの相続税対策は、早い段階から長期的に行うことが重要になります。
長期的な相続税対策は、資産状況に応じた個別の判断が必要です。検討にあたっては必ず、最新の税制改正に精通した税理士に相談するようにしましょう。
当事務所は「不動産に強い税理士事務所」です。税務知識と不動産業界のノウハウを駆使して、皆様をサポートいたします。相続税対策についてご検討の際は、お気軽にご相談ください。
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