【兄弟相続での空き家問題を解消】単独登記型の換価分割と相続空き家の3,000万円特別控除

【兄弟相続での空き家問題を解消】単独登記型の換価分割と相続空き家の3,000万円特別控除

亡くなった人に子や親がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が相続人となる「兄弟相続」では、様々な課題が発生します。特に、遺産に不動産がある場合には、その不動産が空き家になってしまい、大きな問題に発展することもあります。

※兄弟相続については「【兄弟が相続人になる遺産相続】円満相続にするための方法」をご覧ください。

兄弟相続での空き家トラブルを回避するには「単独登記型の換価分割」が有効です。この記事では、兄弟相続での空き家問題や単独登記型の換価分割のメリット、相続空き家の3,000万円特別控除についてご紹介します。兄弟相続が発生している人はぜひ参考にしてください。

 

兄弟相続は空き家の相続が課題

兄弟相続で課題になることは「不動産(自宅)」の相続です。被相続人に配偶者がいれば大きな問題ではありませんが、兄弟姉妹のみが相続人になる場合には悩みの種になってしまいます。

なぜなら、兄弟相続で相続される不動産(自宅)は「空き家」になってしまう可能性が極めて高いからです。

 

空き家になってしまう理由

亡くなった被相続人の兄弟姉妹は同世代の場合が多く、既に生活基盤である自宅を保有しているため、被相続人の自宅を相続しても使い道がありません。

また、兄弟姉妹が離れた所に住んでいる場合は、自宅の管理を行うことは困難です。その結果、被相続人の自宅を兄弟姉妹の誰かが相続したものの、管理が行われず放置するケースも少なくありません。

 

空き家にすることのリスク

空き家を管理せずに放置してしまうことは、大きなリスクに繋がりますので絶対に避けるようにしましょう。空き家には物理的な問題と経済的な問題、社会的な問題があります。

 

①物理的な問題

空き家はひと気がないため、放火される可能性があります。また、旧耐震基準で建設されている場合には倒壊のリスクも考えられます。

 

②経済的な問題

空き家であっても、毎年の固定資産税の支払いが必要です。空き家を放置すると「特定空き家」に認定され、固定資産税の負担額が大きく増加します。また、空き家のままにしておくと老朽化が進み、資産価値がどんどん減少していきます。

 

③社会的な問題

現在、空き家問題は大きな社会問題です。空き家は犯罪に利用されたり、スズメバチやムカデなどの有害生物が住み着いてしまったりするおそれがあり、当事者だけの問題では済まなくなってしまうこともあります。

 

空き家にさせないためには「単独登記型の換価分割」が有効

相続財産である不動産を空き家にさせないためには、空き家の活用方法を話し合うことです。賃貸物件にすることができるのかなど、有効活用できる方法がないかを相続人全員で考えることが重要です。

検討しても活用方法がなく、空き家になってしまう場合には「単独登記型の換価分割」を利用することで、できるだけ手間をかけずに遺産分割から不動産の売却まで行えます。

 

単独登記型の換価分割とは

換価分割とは、不動産などの金銭以外の遺産を売却し、現金化したうえで分け合う遺産分割方法の1つです。物理的に分けることができない不動産などを公平に分割する際に、非常に有効な方法です。

 

 

売却する不動産は、一度相続人名義にする相続登記を行い、そのあとに売却手続きを行います。相続財産である不動産を相続登記する方法には「共有登記型」と「単独登記型」の2つの方法があります。

共同登記型とは、遺産分割時に対象の不動産を複数の相続人で共有取得し、共有持ち分のまま売却する方法です。

 

 

単独登記型は、複数の相続人の中から1人代表者を決めて登記し、単独で不動産売却手続きを行う方法です。不動産の売却後に、遺産分割協議で決められた割合の現金を他の相続人に分配します。

 

 

単独登記型の換価分割では売却手続きが簡単に!

不動産の売却手続きには、所有者全員の同意と立ち合いが必要になります。共有登記型の換価分割では、共有者全員が売買契約や代金決済などの重要な場に立ち会わなければなりません。

そのため、相続人の1人が海外や遠方に住んでいる場合など、全員で手続きを行うことが難しく売却手続きが全然進まないケースも少なくありません。

単独登記型の換価分割であれば、相続人の代表者1人が登記上の所有者になっているため、代表者の立ち合いのみで不動産の売却手続きを進めることができます。

売却後に、代表者から各相続人に代金の分配が行われます。単独登記型の換価分割は共有登記型と比べて、相続人の手間と労力を減らすことができる方法です。

 

遺産分割協議書の記載に注意!

単独登記型の換価分割では、遺産分割協議書の書き方に注意が必要です。遺産分割協議書には「相続人の1人が代表して不動産の売却手続きを行うこと」と「売却後の残金を決められた割合で分配すること」をしっかりと記載していなければなりません。

遺産分割協議書で単独登記型の換価分割を証明できなければ、売却代金の分配が贈与に認定されてしまうこともあります。単独登記型の換価分割を行う場合は、専門家に遺産分割協議書の作成を依頼した方がいいでしょう。

 

相続空き家の3,000万円特別控除が利用できる可能性もある!

被相続人が亡くなったことで空き家になった不動産を相続し、売却した場合には一定の要件を満たすことで、譲渡所得から3,000万円を控除することができる特例があります。この特例を利用することで譲渡所得にかかる税金を大きく減額することが可能です。

換価分割では、売却した不動産の共有者(相続人)がそれぞれ譲渡所得の確定申告を行わなければなりません。共有登記型の換価分割であれば、それぞれが「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用することができるため、総額で考えると「共有者の人数×3,000万円」を利用することができます。

 

では、単独登記型の換価分割はどうでしょうか。「代表者1人×3,000万円」になり、代表者以外の相続人は相続空き家の3,000万円特別控除を利用することはできないのでしょうか。

いいえ、そうではありません。単独登記型の換価分割であっても、遺産分割協議書で定めた共有者全員が相続空き家の3,000万円特別控除を利用することが可能です。

 

ただし、単独登記型の換価分割による相続空き家の3,000万円特別控除の適用については、国税庁の通達で厳密に触れられておらず、専門家の中でも意見の分かれる部分でもあります。特例の適用については、不動産相続を専門に取り扱う当事務所に一度ご相談ください。

 

令和5年度税制改正により、複数人で相続空き家の3,000万円特別控除を利用する場合の上限が設けられています。

3人以上で特別控除を利用する場合は、1人あたりの控除額の上限は2,000万円となります。

 

3-1.複数人で相続空き家の3,000万円特別控除を利用すると大きく所得税が減税に

相続空き家の3,000万円特別控除は、一定の要件を満たすことで利用できる大きな減税効果のある特別控除です。単独でこの特別控除を利用するだけでも効果の高い減税効果があるのですが、複数人で相続空き家の3,000万円特別控除を利用すると、さらに効果の高い減税効果を発揮します。

すなわち、単独登記型の換価分割で代表者1人しか相続空き家の3,000万円控除を利用できない場合と遺産分割協議書で定めた共有者全員が利用した場合では所得税額に大きな差が生じます。

 

<相続空き家の3,000万円控除の特例のシミュレーション>
不動産を相続する相続人の数 2人(相続割合50%ずつ)
売却額 8,000万円
取得費 2,000万円(所有期間5年超)
譲渡費用(測量費など)1,000万円

 

・代表者1人しか特例を利用しない場合

相続人A(代表者)
売却額1億円-(取得費2,000万円+譲渡費用1,000万円)=7,000万円
(7,000万円×相続割合50%)-特別控除3,000=500万円
500万円×税率20.315%=譲渡所得にかかる所得税額101万5,700円(百円未満切捨て)

相続人B
売却額1億円-(取得費2,000万円+譲渡費用1,000万円)=7,000万円
(7,000万円×相続割合50%)=3,500万円

3,500万円×税率20.315%=譲渡所得にかかる所得税額711万200円(百円未満切捨て)

相続人AとBの譲渡所得にかかる所得税額合計812万5,900円

 

・遺産分割協議書で定めた共有者全員が特例を利用した場合

相続人A(代表者)
売却額1億円-(取得費2,000万円+譲渡費用1,000万円)=7,000万円
(7,000万円×相続割合50%)-特別控除3,000=500万円
500万円×税率20.315%=譲渡所得にかかる所得税額101万5,700円(百円未満切捨て)

相続人B
売却額1億円-(取得費2,000万円+譲渡費用1,000万円)=7,000万円
(7,000万円×相続割合50%)-特別控除3,000万円=500万円
500万円×税率20.315%=譲渡所得にかかる所得税額101万5,700円(百円未満切捨て)

相続人AとBの譲渡所得にかかる所得税額合計203万1,400円

上記の例では、遺産分割協議書で定めた共有者全員が利用した場合は、代表者1人しか特例を利用しない場合と比べて合計609万4,500円も税額が少なくなったことがわかります。

 

手間を最小限にし、特例のメリットを最大限に活かすには、プロである私たちにご相談ください

不動産相続のプロである当事務所では、依頼者様に最適なプランをご提供し、不動産の相続手続きから売買手続き、その後の所得税の確定申告まで総合的にサポートしております。手間を最小限にし、相続空き家の3,000万円特別控除をはじめとした様々な特例のメリットを活かすには、ぜひ不動産相続のプロである私たちにご相談ください。

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この記事の執筆者:渡邉 優

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この記事の執筆者:渡邉 優

「渡邉優税理士事務所」代表。相続の中でも“不動産にお困りごとを抱える相続”の対応を得意としている。

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