相続した実家は、相続登記(名義変更)を済ませれば売却できます。ただし、売却によって譲渡所得が生じると、譲渡所得税等がかかる場合があるため、「空き家の3,000万円特別控除」や「取得費加算の特例」を使えるかどうかで手取り額が大きく変わります。
本記事では、実家を相続してから売却するまでの流れ、売却にかかる税金、使える特例、売却タイミングの判断基準と注意点をわかりやすく解説します。
※本記事は一般的な解説です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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「実家を相続したけれど、自分は別に家があるし、住む予定もない。売れるなら売りたいけれど、何から始めればいいのか…」
こうした悩みを抱える方は少なくありません。結論から言えば、相続した実家は「相続登記」を済ませれば売却できます。ただし、いつ売るかによって税金が大きく変わります。
売却益から最大3,000万円を控除できる「空き家特例」や、納付した相続税を経費にできる「取得費加算の特例」にはそれぞれ厳しい期限があり、タイミングを逃すと数百万円単位で損をしかねません。
相続した実家を売却するには、被相続人(亡くなった方)名義のままでは所有権を移転できないため、相続登記(名義変更)が必須です。不動産の売買では、売主が所有者であることを登記簿上で証明する必要があるため、売却の決済までに相続登記を完了させておかなければなりません。
2024年4月1日から、相続登記が法律上の義務となりました(改正不動産登記法 第76条の2)。相続により不動産の取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象になります。
さらに、義務化以前に発生した過去の相続にも遡及適用され、猶予期限は2027年3月31日です。実家の売却を検討しているなら、登記の放置は避けてください。
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実家の売却は、大まかに以下の4ステップで進みます。各ステップの詳細な手続きは関連記事に譲り、ここでは全体像を把握していただきます。
相続人が複数いる場合は、まず全員で遺産分割協議を行い、実家を売却して代金を分配する「換価分割」などの方針を決めます。合意内容は遺産分割協議書にまとめてください。
なお、この協議書の書き方が不適切だと贈与税のリスクが生じます(詳しくは後述の注意点の章で解説します)。
被相続人名義から相続人名義へ変更する手続きです。法務局に申請し、売却の決済日までに完了させます。登録免許税として不動産の固定資産税評価額の0.4%が必要です。
実家の売却では「遺品整理(残置物の処分)」を避けて通れません。処分費用の負担方法は遺産分割協議書で決めておくと後のトラブルを防げます。
その後、不動産会社に査定を依頼し、「仲介(市場で買主を探す)」か「買取(不動産会社が直接買い取る)」かを選択して売却活動を進めます。必要に応じて測量(境界確定)や建物の解体工事が発生する場合もあります。
売却が完了したら、代金から仲介手数料などの諸経費を差し引き、遺産分割協議書で定めた割合で相続人に分配します。
売却により譲渡所得が生じ課税される場合は、翌年に確定申告が必要です。「空き家の3,000万円特別控除」などの特例を適用する場合も、確定申告が必須の条件となります。確定申告は、売却代金を受け取った相続人がそれぞれ個別に行います。
では、実家を売却するタイミングはいつがよいのでしょうか。税金を安くできる特例には期限があるため、次の章で確認しましょう。
相続した実家を空き家のまま保有していると、毎年の固定資産税・火災保険料・修繕費などのコストがかかり続けます。
さらに、管理を怠って「特定空家等」や「管理不全空家等」に指定され行政から勧告を受けると、住宅用地特例(地方税法 第349条の3の2)が解除され、土地の固定資産税が最大で6倍程度になる場合があります(2023年空家法改正で「管理不全空家等」も勧告の対象に追加されました)。
後述する2つの主要な特例には、それぞれ以下の売却期限があります。
期限を過ぎてから売却しても、これらの特例は一切使えません。
相続税の計算で土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」を利用する場合、取得者によっては相続税の申告期限(10ヶ月)まで土地を保有し続ける要件があります(租税特別措置法 第69条の4)。
具体的には、配偶者は保有要件なしで適用できますが、同居親族などが取得するケースでは、10ヶ月以内に売却すると特例の適用要件を満たさなくなる可能性があります。相続税の申告内容を確認してから売却時期を判断してください。
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実家の売却で生じる譲渡所得税を軽減できる主な特例は、以下の2つです。同一の譲渡について、この2つを重ねて適用することはできません(選択適用)。
相続した実家を売却した場合に、売却益(譲渡所得)から最高3,000万円を控除できる制度です(租税特別措置法 第35条第3項)。相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円に縮小されます。
主な適用要件:
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2024年1月1日以降の譲渡では、従来のように売主が売却前に耐震改修や解体を行う必要がなくなりました。買主が売却の翌年2月15日までに解体・耐震改修を完了すれば、売主に特例が適用されます。
これにより、売主(相続人)が数百万円の解体費を先出しする必要がなくなったのは大きなメリットです。ただし、買主が工事を期限内に完了しなければ特例が適用できないリスクもあるため、売買契約書に工事完了に関する特約を入れておくことが推奨されます。
相続税を納付した方が、相続開始から3年10ヶ月以内に相続財産を売却した場合、その財産に対応する相続税額の一定額を取得費に加算でき、譲渡所得税を軽減できる制度です(租税特別措置法 第39条)。
同一の譲渡について、空き家特例と取得費加算の特例を重ねて適用することはできません。どちらが有利かは、売却価格や納付した相続税額によって異なります。安易に判断せず、税理士に両方のパターンでシミュレーションを依頼することをおすすめします。
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実家を売却した場合に課税されるのは譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税)ですが、これは「売った金額がそのまま利益になる」わけではありません。
譲渡所得 = 売却代金 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
被相続人の所有期間を引き継ぐため、長期間所有していた実家であれば、税率は長期譲渡所得の約20.315%が適用されます。
代々受け継いだ土地などで、当時の売買契約書や領収書が残っていない場合、取得費として認められるのは売却価格の5%(概算取得費)のみとなります(所得税法 第61条)。この場合、売却金額の95%近くが課税対象の利益(譲渡所得)とみなされ、税負担が数百万円単位で余計に高くなる可能性があります。
売却を決める前に、購入時の契約書・領収書はもちろん、当時の住宅ローン関連書類や不動産広告など、購入金額を推定できる資料がないか徹底的に探しましょう。
換価分割で実家を売却する場合、手続きの便宜上、代表者1人の単独名義に相続登記してから売却し、代金を分配するケースがあります。このとき、遺産分割協議書に「換価分割の目的であること」が明記されていないと、税務署から代表者→他の相続人への「贈与」とみなされ、高額な贈与税が課されるリスクがあります。
贈与税を回避するために、遺産分割協議書には以下の2点を必ず明記してください。
個別の判断は必ず税理士に確認してください。
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譲渡所得が生じ課税される場合は、翌年の確定申告が必要です。また、3,000万円特別控除などの特例を適用する場合も、確定申告が必須条件です。
確定申告をしなければ特例が適用されないだけでなく、無申告加算税などのペナルティが発生する可能性もあるため、売却後は忘れずに手続きしてください。
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できません。不動産を売却するには、被相続人名義から相続人名義への変更(相続登記)が必要です。2024年4月からは相続登記が義務化され、3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象にもなるため、早めに手続きを済ませましょう。
売却益(売却価格から取得費や諸費用を差し引いた額)が出た場合に「譲渡所得税」がかかります。売却しても利益が出なければ課税されません。なお、「3,000万円特別控除」などの特例が使えれば、売却益が出ていても税金がゼロまたは大幅に減額されることがあります。
いいえ。昭和56年5月31日以前に建てられた旧耐震基準の一戸建てで、被相続人が一人暮らしだった実家に限られます。マンションは対象外です。また、売却価格1億円以下、原則として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する、などの要件があります。
同一の譲渡について、両方を重ねて適用することはできません。どちらか有利な方を選んで適用します。どちらが得かは、売却価格や納付した相続税額によって変わるため、税理士にシミュレーションを依頼されることをおすすめします。
利用できる特例によって異なりますが、「空き家の3,000万円特別控除」は原則として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、「取得費加算の特例」は相続開始から3年10ヶ月以内が売却期限です。いずれも期限を過ぎると適用できなくなるため、早めにスケジュールを確認することをおすすめします。
相続した実家を売却する際は、相続登記などの手続きを進めるだけでなく、売却時に利用できる税金の特例や適用期限を事前に確認することが大切です。まずは以下の3点を確認しましょう。
空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例は、要件や期限によって適用できるかどうかが変わります。売却後の手取り額を少しでも増やしたい方や、どの特例を利用できるかわからない方は、早めに税理士に相談し、ご自身の状況に合った売却計画を立てましょう。
※本記事は一般的な解説です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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