空き家であっても、土地・建物に資産価値がある以上、相続税の課税対象になります。「空き家だから相続税がかからない」というのは誤解です。空き家の土地は路線価方式や倍率方式で、建物は固定資産税評価額をもとに評価されます。
本記事では、空き家にかかる相続税の判断方法、評価額の決まり方、小規模宅地等の特例が使える場合と使えない場合の違い、放置した場合のリスクについて解説します。
※本記事は一般的な解説です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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「実家が空き家のままだけど、空き家なら相続税はかからないんじゃないか…」
こうした考えをお持ちの方は少なくありません。しかし、結論から言えば、空き家であっても土地・建物には資産価値があるため、相続税の課税対象になります。
また、「空き家は3,000万円控除が使えるから大丈夫」という声もよく聞きますが、この制度は売却時の譲渡所得税(所得税・住民税)を安くするものであり、相続税を非課税にする制度ではありません。この2つの税金を混同してしまうと、判断を誤る原因になります。
「空き家を相続したら相続税はかかるのか?」「使える特例はあるのか?」についての判断の目安を見ていきましょう。
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空き家であっても、土地と建物は財産です。相続税は「遺産全体の金額」に対して課税されるため、空き家であるかどうかに関係なく課税対象になります。
「うちの空き家は相続税がかからなかった」という話を聞くことがあるかもしれませんが、その多くは「空き家だから」ではなく、「遺産全体が基礎控除額に収まったから」です。空き家という事実そのものが相続税を免除するわけではありません。
また、よくある混同として「空き家の3,000万円特別控除」があります。これは空き家を売却した際の譲渡所得税を軽減する制度であり、相続税を0円にする制度ではない点に注意してください。
相続税がかかるかどうかは、遺産全体の課税価格が基礎控除額を超えるかどうかで判断されます。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
空き家の評価額だけで判断するのではなく、預貯金・有価証券・死亡保険金(非課税枠超過分)なども含めた遺産全体の金額と基礎控除額を比較することが大切です。
では、空き家の評価額はどのように決まるのでしょうか。次の項目で確認しましょう。
空き家だからといって特別な評価方法が適用されるわけではありません。居住中の自宅と同じ方法で、土地と建物をそれぞれ評価します。
空き家の土地の相続税評価額は、以下のいずれかの方法で計算されます。
路線価は、国税庁のWebサイト「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
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建物の相続税評価額は、固定資産税評価額 × 1.0(つまり固定資産税評価額と同額)です。これは「財産評価基本通達 第89条」に定められており、空き家であってもこの評価方法は変わりません。固定資産税評価額は、毎年届く「固定資産税の課税明細書」で確認できます。
空き家であっても、土地・建物の相続税評価額が自動的に大幅に下がる仕組みはありません。
むしろ、同居の自宅を相続する場合に利用できる「小規模宅地等の特例(80%減額)」が空き家では使えないケースがあるため、結果として相続税の負担が大きくなることがあります。この特例の適用可否が、空き家の相続税において最も重要なポイントです。
「空き家なら特例が使えない」と一律に考える必要はありません。被相続人(亡くなった方)が生前に住んでいた家かどうか、そして誰が相続するかによって、適用の可否が変わります。
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)は、被相続人の「居住の用に供されていた宅地」に適用される制度です(租税特別措置法 第69条の4)。
そのため、被相続人が生前からすでに居住しておらず、長期間にわたって空き家のままだった土地は、原則として特例の対象になりません。
被相続人が生前に住んでいた実家であっても、実務上、亡くなった時点で空き家になっていた土地に小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)が使えるのは、原則として「被相続人が老人ホーム等に入居していたケース」です。(租税特別措置法 第69条の4 第1項、同法施行令 第40条の2 第2項)。
老人ホーム等の入居により実家が空き家となっていた場合に特例を適用するには、以下の要件を満たしている必要があります。
施設要件を満たしていても、誰がその敷地を相続するかによって特例が使えるかどうかが分かれます。老人ホーム入居による空き家実家の場合、実務上は以下の3つのパターンに整理されます。
※なお、配偶者以外の親族が特例を使う場合、申告期限(10か月)前に売却してしまうと適用できなくなるため注意が必要です。また、売却時の「空き家3,000万円特別控除」とは要介護認定の判定時期(相続税は死亡直前、売却特例は入所直前)が異なるため、混同しないようご注意ください。
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空き家の相続では、相続税以外にも知っておくべき税金リスクがあります。以下に簡潔にまとめます。
住宅が建つ土地には「住宅用地の特例(地方税法 第349条の3の2)」が適用されており、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。しかし、空き家を管理せず放置し、「特定空家等」や2023年の空家法改正で新設された「管理不全空家等」に指定されて行政から「勧告」を受けると、この軽減措置が解除されます(空家等対策の推進に関する特別措置法 第13条・第22条)。
解除されると、土地の固定資産税は計算上最大6倍になります(負担調整措置により実際の増加は4倍前後が一般的です)。相続税がかからなかったとしても、放置すれば毎年の固定資産税負担が膨らむリスクがある点に注意してください。
相続した空き家を売却する場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(租税特別措置法 第35条第3項)」(通称:空き家の3,000万円特別控除)を利用できる場合があります。ただし、この特例は譲渡所得税(所得税・住民税)を軽減する制度であり、相続税とは別の税金の話である点に注意してください。
主な適用要件は、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前の建築)の建物であること、被相続人が一人暮らしだったこと、相続開始から3年後の年末までに売却すること等です。2024年の改正で、相続人が3人以上の場合は控除額が1人あたり2,000万円に縮小されている点にもご注意ください(相続人が1〜2人の場合は従来通り最大3,000万円)。
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空き家の土地・建物だけでなく、預貯金や他の財産も合わせた遺産全体の金額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかを確認しましょう。
空き家の土地に特例を適用できるかどうかは、「被相続人の生前の利用状況」と「誰が相続するか」で大きく変わります。配偶者・同居親族・別居親族(家なき子)のいずれに該当するかを確認し、判断が難しければ税理士に相談してください。
相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」です。特例を適用する場合、期限内申告が必須です。空き家の処分(売る・残す・貸す)の判断は時間がかかりがちですが、申告期限を過ぎると特例の適用資格を失います。早めに税理士に相談し、スケジュールを立てることが重要です。
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建物が古くても、固定資産税評価額が0円でない限り相続税の課税対象になります。また、建物の評価額が低くても、土地の評価額は路線価等で算出されるため、土地部分で高額になるケースがあります。空き家かどうかではなく、遺産全体が基礎控除を超えるかどうかで判断します。
はい、なります。空き家であっても土地・建物には資産価値があるため、相続税の課税対象です。「空き家だから対象外」ということはありません。
相続税は「相続が発生した時点の遺産」に対して課税されるため、相続後に売却しても相続税の課税対象であることは変わりません。なお、売却時に「空き家の3,000万円特別控除」を使えば譲渡所得税を減らせる場合がありますが、これは相続税とは別の税金(所得税・住民税)の制度です。
相続開始時に誰も住んでいない空き家であっても、直ちに特例の対象外となるとは限りません。被相続人が生前に住んでいた家であるか、誰が相続するか、老人ホーム等への入所などの事情があるかによって適用の可否が変わります。要件は複雑ですので、税理士にご相談ください。
当事務所では、初回無料でご相談・シミュレーションを承っております。ご依頼いただいた場合の費用についても事前にお見積もりを提示いたします。
本記事では、空き家を相続した場合の相続税の考え方について解説しました。ポイントは以下の3点です。
空き家の相続税は、土地・建物の評価額だけでなく、遺産全体の金額や適用できる特例によって大きく変わります。特に、小規模宅地等の特例が適用できるかどうかは、相続税の負担を左右する重要なポイントです。相続税がかかるかどうか不安な方や、特例の適用要件がわからない方は、早めに税理士に相談し、ご自身の状況に合った対策を検討しましょう。
※本記事は一般的な解説です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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