【文例つき】不動産の相続登記に必要な遺産分割協議書の書き方を紹介!

【文例つき】不動産の相続登記に必要な遺産分割協議書の書き方を紹介!

相続により引き継いだ不動産は、名義変更(相続登記)を必ず行わなければなりません。相続登記を行う際、提出しなければならない書類の中には、戸籍謄本など取得するだけでいい書類とご自身で(または専門家に依頼して)作成する「遺産分割協議書」が必要です。

 

遺産分割協議書には、法的に決められた形式はないものの、相続登記に必要な情報が漏れていると再度作り直しになります。その場合、改めて相続人の実印が必要になり、非常に手間がかかってしまいます。

 

ここでは「不動産の相続登記が確実にできる遺産分割協議書の作り方」について紹介します。不動産相続がある方は、ぜひ最後までお付き合いください。

 

遺産分割協議書は必要?

遺産分割協議書は、法定相続人全員で「誰が・何を・どれくらい」相続するのかを協議した結果を書類にまとめたものです。原則的に、遺言書が残されていない場合や遺言書の内容と違う財産の相続を行う場合に遺産分割協議が必要になります。遺言書があり、遺言書のとおりに財産を相続する場合には、遺産分割協議書は必要ありません。

 

遺産分割協議書が必要な場面

遺産分割協議書は、相続人全員での遺産分割で決まった内容を証明する書類であるため、相続関連手続きで必要になります。

 

・不動産の相続登記

遺産に不動産があり、法務局で相続登記(名義変更)をする際に遺産分割協議書が必要です。

 

・金融機関などでの名義変更

預貯金や有価証券などの名義変更を行う場合、遺産分割協議書の提出が必要です。

・相続税申告

相続税申告は、相続した財産の評価額をもとに相続税を計算します。誰が何をどれだけ相続したのかを証明するために遺産分割協議書の提出が必要です。

 

不動産の相続登記に必要な遺産分割協議書の書き方

不動産の遺産分割協議書にはルールはありませんが、記載漏れがあると相続登記を行うことができません。記載漏れをなくすためには、遺産分割協議書をパートごとにわけて作成することが大切です。

 

①タイトル・被相続人の情報

最初のパートは「タイトル・被相続人の情報」です。タイトルに遺産分割協議書と記載し、その下に亡くなった被相続人の情報を記載します。被相続人の氏名と生年月日、死亡日、最後の本籍については「戸籍謄本」で確認できますので、戸籍謄本のとおりに記載しましょう。

 

遺産分割協議書

 

被相続人  千代田 太郎

生年月日  昭和27年7月3日

死亡日   令和6年5月16日死亡

最後の本籍 東京都世田谷区〇〇丁目〇〇番〇〇

最後の住所 東京都世田谷区〇〇丁目〇〇番〇〇

 

②協議の前書き

続いて、誰が遺産分割協議を行ったのかを記載します。遺産分割協議は法定相続人全員での協議が必要です。

 

被相続人 千代田 太郎の下記遺産について、同人の相続人である千代田 幸子、千代田 次郎は分割協議を行い、下記のとおり遺産分割の協議が成立したことを証明する。

 

③相続する人と不動産の情報

相続する人と不動産の情報を記載します。遺産分割協議書で最も重要なポイントになりますので、不動産の表記などは登記事項証明書どおりに記入しましょう。固定資産納税通知書を見ながら記入すると法務局で受け付けてもらえない可能性があります。

また、不動産の情報は、一軒家の場合とマンションである場合の記載方法が異なりますので注意しましょう。

 

・一戸建ての場合

第1条

下記不動産は、相続人 千代田 幸子が取得する。

 

(1)土地

所 在 世田谷区〇〇丁目

地 番 〇〇番〇〇

地 目 宅地

地 積 〇〇.○㎡

 

(2)建物

所 在 東京都世田谷区〇〇丁目 〇〇番地〇〇

家屋番号 〇〇番〇〇

種 類 居宅

構 造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 〇〇.○㎡

2階 〇〇.○㎡

 

一戸建ての場合は、土地と建物をわけて記載します。土地は所在、地番、地目、地積を登記事項証明書からそのまま転記しましょう。建物も同様に所在、家屋番号、種類、構造、床面積を登記事項証明書からそのまま転記します。

 

・マンションの場合

 第1条

下記不動産は、相続人 千代田 幸子が取得する。

 

(1)建物

一棟の建物の表示

所在 東京都世田谷区〇〇丁目 〇〇番地〇〇

建物の名称 〇〇ビル

 

専有部分の建物の表示

家屋番号 世田谷区〇〇丁目 〇〇番地〇〇

建物の名称 502

種類 居宅

構造 鉄筋コンクリート造○階建

床面積 ○階部分 〇〇.○㎡

 

敷地権の目的である土地の表示

土地の符号 ○

所在及び地番 東京都世田谷区〇〇丁目 〇〇番地〇〇

地目 宅地

地積 ○〇〇.○㎡

 

敷地権の表示

土地の符号 ○

敷地権の種類 所有権

敷地権の割合 ○○○○分の○○○

 

マンションの場合は、不動産の表示が複雑です。登記事項証明書のとおりに一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の表示の3つを記載しましょう。

 

④後日判明した財産に関する協議方法

遺産分割協議の段階では見つからなかった財産が、遺産分割後、新たに発見されることがあります。後々トラブルにならないように新たに発見された財産についての対応方法を記載しておきましょう。

 

・再度協議する場合

第2条

後日、上記以外の遺産が判明したときは、別途相続人全員で協議するものとする。

 

・相続人の1人が相続する場合

第2条

後日、上記以外の遺産が判明したときは、千代田 幸子が取得するものとする。

 

⑤遺産分割協議書の作成・保管方法について

締めの文言として「相続人全員で協議したこと」と「遺産分割協議書の作成・保管方法」について記載します。

 

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を作成し、各自1通を保管する。

 

⑥法定相続人全員の住所・署名・押印(実印)

最後に法定相続人全員の住所・署名・押印を行います。日付は最後に署名した人が署名した日を記載するケースが一般的です。各相続人の直筆での氏名の記載と実印での押印が必要です。押印が実印でなければ、法務局で登記が却下されてしまいますので、必ず実印で押印しましょう。

 

令和〇年〇月〇日

住 所 東京都世田谷区〇〇丁目 〇〇番地〇〇

相続人 千代田 幸子 印

 

住 所 東京都世田谷区〇〇丁目 〇〇番地〇〇

相続人 千代田 次郎 印

 

遺産分割協議書作成の注意点

必ず法定相続人全員で協議を行うこと

遺産分割協議は必ず相続人全員で行わなければなりません。「相続人全員が1か所に集まって話し合う」というイメージを持たれる方も多いですが、対面でなくてもオンライン会議システムを利用する方法もあります。署名押印についても、郵送で順番に行う方法でも構いません。

 

法定相続人全員分を作成する

一般的に、遺産分割協議書は法定相続人の人数分を作成し、各自保管します。法的に決まっているわけではありませんが、遺産分割協議書を1通だけしか作成していなければ、相続手続きを行う際に1通の協議書を使い回さなければならないため、有効な方法とは言えません。公平性を保つためにも遺産分割協議書は法定相続人の人数分を作成しましょう。

 

2ページ以上なら契印、2通以上作るなら割印を押す

遺産分割協議書が1ページで収まらず、2ページ以上になる場合はページの見開き部分に「契印」を押しましょう。契印を押すことでページが連続していることを証明でき、改ざんを防ぐことができます。

 

遺産分割協議書を2通以上作成する場合は、複数の書類にまたがって印鑑を押す「割印」を行いましょう。割印を行うことで、全ての書類の内容が同じであることを証明することができます。

 

遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家

「自分で遺産分割協議書の作成が難しい」という場合は、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼することができます。遺産分割協議書を作成できる専門家は複数いるため、目的によってどの専門家に依頼するのかを検討しましょう。

 

不動産登記を司法書士に依頼する場合は、遺産分割協議書の作成についても依頼することができます。また、相続トラブルが発生しており、弁護士に相談しているケースでは、弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼することが可能です。

 

相続税申告義務があり、遺産分割協議書を相続税申告書に添付しなければならない場合は、税理士に遺産分割協議書の作成を依頼することができます。遺産分割協議書の作成のみを依頼したい場合は行政書士に依頼することが可能です。

 

ワンストップでの相続手続きなら渡邉優税理士事務所

遺産分割協議書の作成を含め、相続手続きには専門知識が必要となり、時間、手間がかかってしまいます。専門家に依頼する場合であっても、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士、相続不動産の売却は不動産会社、トラブルが発生したら弁護士など、各専門家を自分で探し、対応しなければなりません。

 

「煩わしい手間を省きたい」という場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。相続に関する専門家と提携し、ワンストップで相続手続きを完了することが可能です。グループに相続不動産に特化した不動産会社がありますので、不動産の活用や処分についてもご相談いただけます。以下の問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

 

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この記事の執筆者:渡邉 優

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この記事の執筆者:渡邉 優

「渡邉優税理士事務所」代表。相続の中でも“不動産にお困りごとを抱える相続”の対応を得意としている。

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