【贈与税以外の税金が課税】個人と法人の間の贈与で生じる税金を解説!

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【贈与税以外の税金が課税】個人と法人の間の贈与で生じる税金を解説!

贈与と聞くと「親から子への贈与」「祖父母から孫への贈与」など、親族間で行われるイメージではないでしょうか。

 

多くのケースでは個人から個人へ贈与が行われますが、会社(法人)から個人、個人から会社(法人)へ贈与が行われる場合もあります。通常、個人間の贈与であれば「贈与税」が課税されますが、個人と法人の贈与では贈与税ではなく他の税金が課税されることになります。

 

また、個人と法人との関係性によって課税関係も異なりますので、法人を対象にした贈与を行う場合には、十分な検討が必要です。ここでは「個人と法人の間の贈与で生じる税金」について詳しく解説します。

 

贈与税は個人に課せられる税金

贈与税とは、個人から個人へ財産を無償で譲り渡す場合に発生する税金のことを言い、贈与税は財産を譲り受けた側に申告納税義務が発生します。贈与税の計算には2つの計算方式があります。

 

贈与税の詳しい計算方法については「【新しい相続時精算課税制度】制度を活用した方がいいケースはどんな時?」をご覧ください。

 

 

 

では、個人と法人との間で贈与が行われた場合には、どのような税金が発生するのかを見ていきましょう。

 

個人・法人の贈与パターン

個人と法人の贈与は、次の4つのパターンのどれかに当てはまり、財産を渡す側、財産を受け取る側にかかる税金の種類が異なります。

 

贈与のパターン  課税される税金
財産を譲り渡す人(贈与者) 財産を譲り受ける人(受贈者)
①個人から個人への贈与 なし 贈与税
②法人から個人への贈与 法人税 所得税
③個人から法人への贈与 みなし譲渡所得税 法人税
④法人から法人への贈与 法人税 法人税

 

①個人から個人への贈与

個人から個人への贈与は、贈与者は一切課税されることはなく、受贈者のみ贈与税が課税されます。贈与税の課税方式の1つである暦年課税では、贈与額から年間110万円の基礎控除額を差し引き、累進課税による税率で相続税額が算出されます。

 

②法人から個人への贈与

法人から個人へ財産の贈与を行った場合、贈与者である法人には「法人税」が課税され、受贈者である個人には「所得税」が課税されることになります。

 

「贈与を受けた個人には贈与税はかからないのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。ここでは、例をあげて解説します。

 

【例】法人が個人に土地を贈与した場合(土地の取得費は1,500万円、時価2,000万円)

贈与者である法人は、財産を時価で渡したとして法人税が課税されることになります。仕訳であらわすと次のとおりです。

 

○○○ 2,000万円(時価) /土地 1,500万円

/評価益(または譲渡益) 500万円

 

会社は土地の取得費と時価の差額を利益として認識し、この利益が法人税の課税対象になります。借方の科目については、法人と個人との関係性によって取り扱いが異なりますので注意が必要です。

 

法人の役員に贈与した場合

法人がその法人の役員に贈与を行った場合は、その役員への賞与として取り扱われます。役員への賞与は法人税法上、損金(事前確定届出給与を除く)にはなりません。つまり、上記の例では、法人は評価益500万円を計上し、さらに役員賞与の2,000万円は税務上の経費にならないため、大きな税負担が発生することになります。

 

役員賞与 2,000万円(時価) /土地 1,500万円

(税務上の経費にならない)  /評価益(または譲渡益) 500万円

 

一方、財産を譲り受けた会社役員には、財産の時価を役員賞与として、所得税・住民税が課税されます。

 

法人の従業員に贈与した場合

法人の従業員に贈与した場合は、その従業員への賞与として取り扱われます。会社役員の場合とは違い、従業員の賞与は税務上の経費として認められるため、会社役員への贈与よりも法人税の負担は少なくなります。

 

賞与 2,000万円(時価) /土地 1,500万円

(税務上の経費になる)  /評価益(または譲渡益) 500万円

 

財産を譲り受けた従業員も、役員の場合と同様に財産の時価を賞与として、所得税・住民税が課税されます。

 

第三者に贈与した場合

法人が、会社とは関係のない第三者に財産を贈与した場合、その贈与は「寄付金」として取り扱われます。第三者への寄付金は「一般の寄付金」に該当し、損金算入限度額までを税務上の経費にすることができます。

 

寄付金 2,000万円(時価) /土地 1,500万円

/評価益(または譲渡益) 500万円

 

財産を譲り受けた第三者は、財産の時価を「一時所得」として、特別控除(最大50万円)を差し引いた金額の2分の1に相当する金額に所得税・住民税が課税されます。

 

③個人から法人への贈与

個人から法人への贈与には、受贈者である法人に財産の時価で「受贈益」が計上され、法人税が課税されます。

 

土地 2,000万円(時価) /受贈益 2,000万円

 

受贈益への法人税の課税はわかりやすいですが、個人から法人への贈与には贈与者である個人に「みなし譲渡所得税」が課税され、所得税・住民税が発生します。本来、贈与者である個人は資産を一切受け取っていないため、譲渡所得は発生しません。しかし、贈与者には時価相当額の代金を受け取ったとみなされて所得税・住民税が課税されます。

 

みなし譲渡所得税の考え方は複雑なのですが、一言で言えば「個人への譲渡所得の課税回避を防ぐための制度」です。例えば、Aが法人Bに土地を贈与した場合に、Aが保有している間の値上がり部分について永久に課税されなくなってしまうことを防ぐため、Aから法人Bへの贈与はAが法人Bへ時価で売却したと捉えて「みなし譲渡所得税」が課税されます。

 

【みなし譲渡所得税のイメージ】

 

みなし譲渡所得税は値上がりについて課税されるものであるため、基本的には価格の変動がない現金を贈与する場合には発生しません。

 

同族会社への贈与には注意が必要

個人からの贈与により、その法人の株式の価格が上がった場合、その増加部分が同族関係者の株主への贈与として、贈与税の対象(みなし贈与)になる場合があります。同族会社への財産の贈与は、様々な税金が複雑に絡み合うことになりますので、事前に税理士に相談しましょう。

 

④法人から法人への贈与

法人から法人へ財産を贈与する場合、受贈者である法人は受贈益、贈与者である法人は寄付金を計上することになります。法人の間に特殊な関係がない場合は、受贈者の受贈益には法人税が課税され、贈与者の寄付金には損金算入限度額まで損金として認識されます。

 

完全支配関係がある場合

贈与者である法人が受贈者である法人の株式を100%保有しているなど、法人間に完全支配関係がある場合には、税務上の取り扱いが異なります。受贈者である法人の受贈益は全て法人税の対象にならず(益金不算入)、贈与者である法人の寄付金も全て税務上の経費になりません。(損金不算入

 

まとめ

個人と個人の贈与では、受贈者のみが贈与税の対象になりますが、法人が絡んだ贈与では、贈与者にも税金が課税される場合があり、個人から同族会社への贈与では法人の株主まで影響が及ぶ場合もあります。

 

事業承継など、個人が法人に財産を贈与しなければならないケースも考えられますが、課税関係を十分に検討しながら進めましょう。

 

当事務所は、法人が絡んだ贈与についてのご相談も承っております。シミュレーションから実行までサポートさせていただきますので、贈与でお困りの際は、下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

 

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この記事の執筆者:渡邉 優

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この記事の執筆者:渡邉 優

「渡邉優税理士事務所」代表。相続の中でも“不動産にお困りごとを抱える相続”の対応を得意としている。

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