なぜ国外資産が税務署にばれる?|税務署が国外財産を把握する方法を解説

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なぜ国外資産が税務署にばれる?|税務署が国外財産を把握する方法を解説

相続税は、亡くなった被相続人の財産に課税される税金です。被相続人や相続人が日本の居住者なのかかどうか、国籍が日本国籍かどうかなどにより例外はありますが、多くのケースでは日本国内にある財産だけではなく、国外にある財産も相続税の課税対象になり、相続税申告を行うことになります。

 

「税務署はなぜ国外にある財産を知ることができるのか」「税務署に申告しなければ分からないのではないのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年では国外財産を把握するために様々な仕組みが作られています。ここでは「国外財産が税務署にばれる仕組み」について解説します。

 

国外の財産に相続税がかかる人

相続税の納税義務の判定は「国内に住所があるか」「被相続人や相続人が日本国籍なのか」「一時居住者かどうか」などにより行われます。詳細は省きますが、被相続人・相続人のどちらかが日本に住所がある場合は、国外財産にも課税されることになるため、相続税申告が必要な大半の方が国外財産にも相続税が課税されることになります。

 

納税義務者の判定については「【国外の財産に相続税はかかる?】相続税の納税義務の判定を解説!」をご覧ください。

 

 

 

税務署が国外財産を把握する方法

国外財産調書の提出により把握

国外財産調書制度では、国外財産の合計額が日本円換算で5,000万円を超える場合には「国外にある全ての財産」を記載した「国外財産調書」を税務署に提出しなければなりません。提出は任意ではなく、義務となっており、正当な理由がなく提出していない場合はペナルティが課されます。

 

国外財産調書の提出状況は、令和3年分12,109件、令和4年分12,494件、令和5年分13,243件となっており、提出件数は年々増加しています。
(出典:国税庁「国外財産調書の提出状況について」)

 

国外財産調書は本人による税務署への申告であるため、信憑性の高い情報であり、国外財産を把握するために用いられていると思われます。

 

国外財産調書の詳しい内容は「海外資産が5,000万円以上なら届け出が必要|国外財産調書とは?」をご覧ください。

 

 

国外送金等調書制度

国外送金等調書制度とは、適正な課税の確保のために国外への送金および国外から受領した送金の金額が100万円を超える場合、送金者・受領者の氏名、住所、本人口座番号、取次金融機関、取引金額、送金目的を記載した調書を金融機関が税務署に提出することを義務付けた制度です。

 

多額の海外送金する際に金融機関から目的・理由を聞かれるのは、調書に送金目的を記載しなければならないためです。

 

税務署は海外送金を利用した脱税やマネーロンダリングを監視しており、金融機関から提出された国外送金等調書に疑わしいものがあれば対象者に「国外送金等に関するお尋ね」を送付し、調査を行っています。

 

お尋ねへの回答で不動産投資や有価証券の購入といった回答を行った場合には、得た収益を申告しているか、国外財産調書に記載されているかなどの確認が行われる可能性があります。

 

国外証券移管等調書制度

国際取引では、国外送金だけでなく、有価証券を国外の証券口座に移して取引を行う場合もあります。現物を移管する場合には国外送金等調書の提出が行われず、抜け道となってしまう可能性があります。

 

税務署では、有価証券の取引も把握するために、有価証券の移管取引に関しても調書の提出を義務付ける「国外証券移管等調書制度」を創設し、平成27年より運用を行っています。

 

国外証券移管等調書は、国内の証券口座にある有価証券を国外の証券口座に移管する場合、または国外の証券口座から国内の証券口座に移管する場合に、国内の証券会社から税務署に調書が提出されます。調書には、移管に係る有価証券の種類、銘柄、数、額面金額等が記載されており、国外にある有価証券の確認ができるようになっています。

 

外国税務当局との情報交換やCRS

日本の税務当局は、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施しており、OECD(経済協力開発機構)が策定・公表した共通報告基準(CRS)を活用しています。

 

CRSとは、非居住者の銀行口座情報を各税務当局で定期的に交換する制度です。預金情報や証券口座、契約した保険の情報などが対象になり、口座保有者の氏名・住所(所在地等)、居住地国、外国の納税者番号などの情報が報告されます。これらの情報は、日本の税務当局が要請して得られるものではなく、日本居住者が国外の口座情報等が自動的に得られるということがポイントです。

 

日本の税務当局では、報告された資産の動きと提出された国外財産調書、国外送金等調書などと照らし合わせ、海外にある資産を分析し、課税上問題がないかを分析しています。

 

【CRSによる分析例】

・被相続人名義の口座情報をCRSにより把握し、相続税申告できちんと申告がされているかの確認

・被相続人が海外法人から得ていた役員報酬の申告漏れをCRSにより把握し、役員報酬をもとに不動産を購入していたため、相続税の申告漏れを確認

 

「国外送金等に関するお尋ね」が届いたらどうする?

国外で不動産を購入や有価証券の購入のために100万円超の海外送金を行うと金融機関から税務署に調書が提出され、税務署が疑義を抱いた場合には「国外送金等に関するお尋ね」が送付されてきます。突然のことでびっくりするかもしれませんが、冷静になって次のような対応を行いましょう。

 

無視せずに適切に対応する

「国外送金等に関するお尋ね」には法的な効力はなく、回答しなかったとしても罰則などのペナルティはありません。しかし、税務署は金融機関からの調書を受け取っており、取引の事実を把握しています。お尋ねを無視したり、回答内容が調書と食い違ったりする場合には、税務調査に発展するリスクもありますので、誠実に対応するようにしましょう。

 

わからなければ税理士に相談

国外送金等に関するお尋ねが届いた場合は、国際税務に強い税理士に相談しましょう。税理士に相談せずに、自分で税務署に問い合わせを行った結果、税務調査に発展してしまうおそれも考えられます。税務調査になると、精神的な負担もあるうえに、調査官とのやり取りに要する時間や言われるがまま追徴税額を支払わなければならなくなるなど、時間的にも金銭的にも大きな負担となります。

 

もし、国外財産についての申告が漏れている場合であっても、税理士に相談することで自主的に申告を行いペナルティを抑えることもできますし、税理士が味方であるという安心感を得ることもできます。

 

突然、国外送金等に関するお尋ねが届いた場合は、慌てて行動せずに国際税務に強い税理士に相談しましょう。

 

まとめ

国外送金を含め、国外に財産を移転させることは難しくない時代ですが、税務署では国外の財産について厳しく取り締まる仕組みを作り、この記事で紹介した方法により常に情報をアップデートしています。

 

「国外に財産あるけどどうしよう」と不安になられている方もいらっしゃると思いますが、適切に申告を行っていれば問題はありませんのでご安心ください。

 

当事務所では、国際相続についてのご相談にも対応しております。海外に財産を保有している方、国外財産についての取り扱いにお悩みの方、国外送金等に関するお尋ねが突然届きお困りの方は、お気軽に下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

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この記事の執筆者:渡邉 優

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この記事の執筆者:渡邉 優

「渡邉優税理士事務所」代表。相続の中でも“不動産にお困りごとを抱える相続”の対応を得意としている。

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